※2026年8月時点の情報です。
金持ちは税負担が実質減るわけのわからない改正
拠出期間の年間の控除額は魅力的だけど、将来の税金はめっちゃ増える
会社員なのに年収が数千万ある人はむしろ満額でやれ
iDeCo全体の仕組みとNISAとの優先順位はこちらで解説しています。
結論
2026年12月分から、会社員のiDeCo拠出限度額は企業年金と共通で月6万2,000円へ引き上げられます。
企業年金がない会社員は、現在の月2万3,000円から月6万2,000円まで拠出できるようになります。
しかし、掛金が全額所得控除になるからといって、月6万2,000円まで入れるのはおすすめしません。
理由は、iDeCoの残高が大きくなりすぎると、受取時に使う退職所得控除と公的年金等控除からあふれるためです。
- 一時金で受け取る:会社の退職金と退職所得控除を共有する
- 年金で受け取る:国民年金・厚生年金などと公的年金等控除を共有する
- 一時金と年金を併用する:二つの控除を使えるが、別の退職金と年金が先に枠を使う
受取時に課税されるだけでiDeCoが必ず損になるわけではありません。
拠出時の節税と運用益非課税は残ります。
「受取時にも控除があるから、満額を積んでも非課税」といった考えは捨てた方が良いです。
iDeCoの掛金は全額所得控除になる
iDeCoの掛金は、小規模企業共済等掛金控除として全額を所得から差し引けます。
月6万2,000円なら年間掛金は74万4,000円です。所得税と住民税の概算軽減額は次のとおり。
| 所得税率 | 住民税率 | 年間の税負担軽減額 |
|---|---|---|
| 5% | 10% | 約11万1,600円 |
| 10% | 10% | 約14万8,800円 |
| 20% | 10% | 約22万3,200円 |
※復興特別所得税を除く概算です。
強いのは強い。
iDeCoの所得控除で安くなるのは基本的に所得税と住民税です。
拠出時は全額所得控除、運用中の利益は非課税、
給付時は年金なら公的年金等控除、
一時金なら退職所得控除という扱いです。
入口だけ非課税なのではなく、出口には別の課税判定がある制度です。
月6.2万円を30年積むと、元本だけで退職所得控除を超える
企業年金がない会社員が、月6万2,000円を30年間積み立てるとします。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 30年間の掛金元本 | 2,232万円 |
| 年4%で運用した場合の残高 | 約4,303万円 |
| 30年分の退職所得控除 | 1,500万円 |
退職所得控除は、20年までは年40万円、20年を超えた部分は年70万円ずつ増えます。30年なら1,500万円です。
一方、月6万2,000円の掛金は年74万4,000円です。
つまり、20年を超えた後は、運用益がゼロでも掛金が年74万4,000円増えるのに対し、退職所得控除は年70万円しか増えません。
30年間では、元本2,232万円に対して退職所得控除は1,500万円。運用益が一切なくても732万円あふれます。
年4%で約4,303万円まで増え、一時金として受け取る場合、会社の退職金がゼロでも課税退職所得は約1,402万円です。
(4,303万円-退職所得控除1,500万円)×1/2
=課税退職所得 約1,402万円
※毎月末に積み立て、年4%で30年間運用した概算。
国税庁が示す退職所得控除の増え方では、月6万2,000円の長期積立をすべて吸収できません。
会社の退職金があれば、控除の空きはさらに減る
会社員には会社の退職金があります。
iDeCo一時金と会社の退職金は、別々に退職所得控除を満額使えるわけではありません。
勤続期間とiDeCoの拠出期間が重複すれば、その重複期間に対応する控除が調整されます。
先ほどの30年間の例で、会社の退職金が1,000万円あり、同じ年に受け取り、期間もすべて重複しているとします。
(iDeCo約4,303万円+会社の退職金1,000万円-退職所得控除1,500万円)×1/2
=課税退職所得 約1,902万円
会社の退職金1,000万円だけなら、30年分の退職所得控除1,500万円に収まります。
しかし、iDeCo一時金が控除の空きを使い切り、課税対象を大きくします。
受取時期をずらせば必ず解決するわけでもありません。
2026年以降、iDeCoを先に受け取る場合は前年以前9年以内、会社の退職金を先に受け取って後からiDeCo一時金を受け取る場合は前年以前19年以内が調整対象になります。
受取順と重複期間は別記事で詳しく解説しています。
年金受取でも、公的年金等控除を独占できない
一時金であふれる分を年金にしたらどうなるでしょうか。
iDeCoを年金で受け取る場合は、公的年金等に係る雑所得として計算します。
- 国民年金
- 厚生年金
- 企業年金
- iDeCo年金
これらを合計して計算します。
公的年金等以外の所得が1,000万円以下で、65歳以上、公的年金等の収入が年330万円以下なら、公的年金等控除は110万円です。
厚生年金などを年180万円、iDeCo年金を年100万円受け取る場合は、次の計算になります。
年金収入280万円-公的年金等控除110万円
=公的年金等に係る雑所得170万円
iDeCoの老齢給付金を年金で受け取る場合は公的年金等に含まれ、65歳以上の最低控除額は110万円です。
会社員は厚生年金だけで控除を使い切ることがあるため、年金受取にしたとしても税負担はあります。
受取方法ごとの違いはこちらで解説しています。
満額が候補になる会社員
次の条件が揃うなら、月6万2,000円の満額拠出も候補になります。
- 現在の所得税率が20%以上で、拠出時の節税効果が大きい
- 会社の退職金や企業年金がない、または少ない
- 退職所得控除と公的年金等控除からあふれる金額まで試算している
- 生活防衛資金とNISAへの投資額を確保しても、60歳まで使わない余裕資金がある
特に、所得税率が高い時期に拠出し、受取時の税率が低くなる人は、出口で一部課税されてもiDeCoの方が有利になることがあります。
反対に、所得税率が5%から10%、会社の退職金あり、厚生年金も受け取る一般的な会社員が、節税という言葉だけで満額へ増やすのはダメです。
金持ちは税負担が実質減るわけのわからない改正です。
会社員は上限ではなく出口から掛金を決める
会社員がiDeCoの掛金を決める順番は
- 会社の退職金・企業型DCの見込額を確認する
- iDeCoの加入期間と想定利回りから受取額を試算する
- 一時金で使える退職所得控除の残りを計算する
- 公的年金の見込額から年金受取に使える控除を計算する
- 拠出時の節税額と受取時の税負担を比べる
現在、月2万円から2万3,000円を拠出しているなら、増額する必要性も特にないと思います。
私は、月2万から増やしません。
追加で投資するお金はNISAや個別株へ回します。
そもそもの話
毎月6.2万を65歳まで塩漬けできる人がどれだけいるんですか?って話です。
無理して満額入れたところで低所得層の節税額はたかが知れてます。
所得控除は所得税率が高い人ほど得をするからです。
お金に余裕があるほど枠を使いやすく、所得が高いほど同じ掛金から得られる減税額も大きい。
金持ちほど得をする意味不明な改正です。
公的年金の先行きが怪しいから自助努力を促すと言いつつ、その援助を一番厚く受けるのが自力で老後資金を作れる層という何ともあほらしい話です。
考えたやつはかなり悪魔的ですね。
まとめ
ま、それでももらえるものはもらっておきましょう。

